玄央 1974年
アトリエで麻縄のストランドの間の縄目を、左手で満身の力でこじ開けた隙間を両足で縄の縒りが戻る力を押さえ込んで、右手で槍のような形に削った形の長い棒状で重いアルミニウムキャストを差し込もうと格闘したその瞬間、左手の親指までいっしょに縄目のなかに挟まれたのだった。すると縄がどんどん親指を締めつけてゆくではないか。痛い。親指が挟まったまま抜けない。まるで縄はヘビのように生きているとドキドキして恐ろしくなった。縄は生きている。まさに有機物なのだ。それは縄の縒りの力の迫力に驚かされた事件だった。縄は縒りの方向にラセン回転し続けている状態と縄自体が逆回転し縒りを戻そうとする力が共に働きつづける状態そのものなのだ。縄とは相反する力の相克の中でぎりぎりに静止しているモノなのだと実感したのだ。他の物質のなかでこのような緊張と動こうとするエネルギーが孕んだモノの存在はあるだろうか。
わたしにその驚異を産み出してくれたのがGenou –b玄奥—bなのである。
ファイバーワークス国際展 クリーブランド美術館 出品
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